市民の皆様へ

Medical column とまこまい医報

とまこまい医報

Mission Impossible Ⅱ(その①)

Mission Impossible Ⅱ(その①)

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

はじめに

私が苫小牧に来た大きな理由はいわゆる小児中枢性疾患(水頭症などの中枢神経奇形、小児頭部外傷、発達障害など)において中央連携とともに地域内医療・療育連携を強化し、急性期からの継続医療・療育をすることにより地域(地元)における子どもの治療予後を確実に改善しようと思ったからである。私の任務は人口17万人弱、北海道の市の中で第4位の苫小牧であっても行政をはじめとして、地域は何もできないとする思い込みで

地域の親達、子ども達を含む人々が擦りこまれた「都市伝説」、「思考停止」の打破、中央依存への「抗い」である。

1.子どもの治療・療育・育成における地域の現実

平成17(2005)年5月に私は21年間勤めていた子ども専門病院北海道立小児総合保健センター(小樽市銭函、現コドモックル)から苫小牧に着任した。中央での大きな問題は急性期治療で命を救ってもその命を育み生活する場である地域との連携が出来ず、急性期が終わった後の治療を地域の中核病院に依頼しても6カ月程経過すると見事なまでに戻ってきてしまうことであった。地域の医療・療育行政に小児医療・療育、障がい児教育という言葉はあっても、地域内連携がない、適切な受け入れ先がないという理由から地域での対応はなく、3~4カ月に1回の中央受診で取り繕われることになる。中央に行っての医療・療育は特殊で地元(地域)の生活環境とは異なるので、社会適応能力は伸びない。子どもの療育は運動能力、知的能力だけではなく、社会適応能力を得ることが最も重要で、それは家族が側にいる場所地元(地域)で近所の人などいろいろな世代(ゴチャマゼ)との生活環境の中で育つ。

40年位前までは中~重症の子どもであっても地域内で治療して、育てる地域完結型の小児医療があった。ところが近年の地域医療・療育行政の面倒回避と中央依存から地域内問題解決という選択肢はなくなり、子ども達は地域社会の中で生き抜く機会を失った(いぶり子ども療育研究会 苫医報79.10~11.2014)。子どもの治療は命を救うだけではなく救った命を育て、精神を成長させていくことにある。生き抜く能力を得るために急性期のみならず大人になる超慢性期に及ぶ継続治療、療育、育成が生活環境である地元(地域)の中に必要である。

2.プライマリケア、急性期対応そして能動的療育の試み

21年前苫小牧着任後直ちに、小児の中枢性疾患患児のプライマリケア及び障がいへの対応を始めた。脊髄髄膜瘤、脂肪腫などの二分脊椎や新生児脳室内出血、小児脳梗塞、脳内出血、脳炎、脳症そして小児頭部外傷、特に虐待が関与した頭部外傷(Abusive Head Trauma、AHT)を地域中核病院と連携し急性期治療、継続治療、療育、育成を開始した。地域の中での生活能力、社会適応能力の促進を目的とした療育の効果は目覚しく、特にプールを利用した療育、教育は子どもの能力向上に明らかな効果を認めた(ほっかいどうタンポポ日胆支部)。

3.想定外だった地域の小児神経外科の有効性

小児神経外科を開設して受診する患児、患者数は想定を遙かに超えて多かった。血腫除去、水頭症治療などの外科的治療の対象患児は5%以下であったが、受診患者は多様で背景のある頭部外傷、頭痛、ストレス関連障害が多く、次いで急性期を中央で治療された後地域に帰され、その後放置されていた移行医療が必要なトランジション、キャリーオーバーと言われる何らかの障害のある患児、患者さんであった。特に生下時から小児期に何らかの問題があった発達障害、癲癇(てんかん)など継続治療、移行医療を必要とする人は地域で診てもらえる病院が出来たと多数来院し、年間患者さんの約40%を占めた。このように地域で診る小児脳神経外科の治療対象は中央とはかなり異なっていた。

小児医療は急性期だけでなく継続的治療が必要なことが多いのに中央はやりっ放し、地域に放りっぱなし。地域は連携なしで無関心、無反応としてきた結果である。そこには急性期が終わったら慢性期、超慢性期の治療の継続が必要ない、ないしは出来ないと思い込んだ地域医療行政システムがある。子どもを取り巻く親の育て方や経済的状況など社会的要因にどう係わるかの配慮(合理的配慮)も欠如していた。つまり障がいのある子どもに対し地元(地域)としての捉えが欠けていた。急性期より地域内で治療、療育しないとお互いさま、互認互助が作動せず患児及び患児の家族は孤立するし、子どもの能力は引き出せない。

このようなことから地元(地域)での療育の活性化とコミュニケーションを行うべく、障がいがあっても地域社会に位置づき青春を謳歌(おうか)できることを目的とした「いぶり子ども療育研究会」を平成22(2010)年12月に発足した。胆振とその周辺地域において、小児医療に加え、生活での展開力を持ち、発達・療育、社会適応能力獲得といった分野で子どもたちを支援する、能力の底上げを図ることを目的に医療従事者、教育関係者などを中心とした能動的な情報交換や連携実行を主とする共同体としての活動集団である。Face to Faceで対応することにより、多くの子どもの疾患、病態への理解をつくりだしその治療・療育、教育を地域に位置づかせていた。(次回に続く)

2026年04月28日 苫小牧民報 掲載

  • 医療・介護サービス提供マップ
  • 苫小牧看護専門学校
  • とまこまい医療介護連携センター
  • 公益社団法人 日本医師会公式チャンネル
ページの上部へ